夜魔

Missingと断章のグリムまではん全部読んでいるにもかかわらず、読んでいなかったことを思い出して査収。

短編集でハードカバーにもかかわらず、サクサク読めるのが嬉しいね。それに加えて描写の巧さが特徴的で、怖いことをうまく怖く伝えてくる文章が心地よい。とはいえ、中身がホラー(オカルト?)なので、「心地よい」という表現は正しくないな。描写の緻密さがさすがというか。

なんだかんだ言ってボリュームがあるはず(250ページ近い)なのだが、あっさり読み切ってしまった。

以下ネタばれの内容も含む。

興味深いのが、『魂蟲奇譚』だろうかね。ほかの短編が一見したところバッドエンドなのだが、これだけ雰囲気からしてバッドエンドというよりグッドエンドである。誤って殺傷してしまい世界中に散らばった恋人を追って自らも世界中に散らばり探す主人公、という構図なわけで、トゥルーエンドではない。が、バッドエンドでもないよなぁ。やはりこの『魂蟲奇譚』は、「怪異」に巻き込まれながらもグッドエンドを迎えた二人のストーリーという解釈ができそう。とはいえ、由佳側がどうか、ということが語られていないのがなんとも。

一方で、『繕異奇譚』と『魄線奇譚』はバッドエンドにしか見えない。ラストからしてそう考えるのが妥当ぽい。

『罪科釣人奇譚』と『薄刃奇譚』は悩むところ。両方ともバッドエンドに見える。が、ここで短編集のテーマぽいものを思い起こすと、「のぞみ」なんじゃないかね。とすると、両方ともその「望み」をかなえた、あるいは達成しているわけで、単純にバッドエンドと言い切るのはズレてる気がする。「のぞみ」の達成、という観点からすればトゥルーといってもいいのかもしらんね。

それにしても、バッドとグッドとトゥルーに分ける意味がどこにあるんだろう、我ながら思った。物語を解釈するための補助線、あるいは自分なりの解釈の仕方、ということで一つ*1

*1:自分がエロゲ脳であること再確認できただけだな